【プレスリリース】コスト高騰緊急アンケート結果を公表しました。
コスト高を「価格転嫁できていない」が96%
~ 農業法人の98%が燃油・肥料・飼料が高騰と回答 ~
公益社団法人日本農業法人協会は、2,080先の会員を対象に燃油・肥料など「コスト高騰緊急アンケート」(2022年5月調査)を実施し、その結果をとりまとめました。
ロシアのウクライナ侵攻や円安の進行などにより、燃油・肥料など農産物の生産に必要な農業資材等が高騰していることから、大規模経営である会員への影響やその対策等を明らかにするため行った調査です。
<調査結果の要点> (1) 燃油・肥料・飼料価格は前年(1-5月)と比べ、約98%が「高騰」又は「値上がり」 (2) 農業資材等の高騰に対し、「使用量」や「購入量」を抑制して乗り切る動きもあるが、 生産量を維持するため購入せざるを得ず「特に対応していない」が最多 (3) 今後の農業資材等の供給見込みについては、78.8%が「不足する」 (4) コスト高騰の影響による今年の生産量は22.1%が「抑制した・抑制見込み」 (5) コスト高騰の影響による今年の経営見通しは43.8%が「マイナス」 (6) また、今年の資金繰り見通しは、64.2%が「苦しい」 (7) コスト高騰に伴う農産物への価格転嫁は96.1%が「できていない」 (8) 農業資材等を「国内調達」することに、81.4%が「期待する」 (9) 具体的な意見として、耕種では「肥料にも価格高騰時の支援制度創設」、 畜産では「現行の配合飼料価格安定対策の見直しが必要」、 耕畜共通の意見として「コストの価格転嫁のため、複雑な流通構造の見直し・簡素化が必要」などの声
調査名 | 調査期間 | 調査
方法 |
調査
対象先数 |
有効
回答数 |
有効
回答率 |
農業におけるコスト高騰
緊急アンケート |
2022年5月10日~
2022年5月18日 |
WEB又は
FAX |
2,080 | 407 | 19.6% |
「農業におけるコスト高騰緊急アンケート」ダウンロード(PDF:442KB)
<調査結果> ※ 詳細は上記資料をご確認ください。
1 燃油・肥料・飼料価格は前年比で約98%が「高騰」又は「値上がり」
(1)燃油(A重油):99.6%が「高騰」又は「値上がり」と回答。このうち「大きな高騰(+10%~30%未満)」が56.1%と過半を超えています。
(2)肥料:97.9%が「高騰」又は「値上がり」と回答。このうち「大きな高騰」が50.8%。なお、施設園芸等燃油価格高騰対策のような価格高騰時の補てん制度を肥料にも求める声がありました。
(3)飼料:97.7%が「高騰」又は「値上がり」と回答。このうち「甚大な高騰(+50%以上)」が21.5%であり、他の資材等と比べて割合が大きくなっています。
(4)建築資材:畜舎などの建築資材についても、96.6%が「高騰」又は「値上がり」と回答。最多は「大きな高騰」の51.3%であり、新たに経営資産を取得する場合でもコスト高になっていることが分かります。
2 コスト高騰への対応として「使用量を抑制」や「購入量を抑制」
コスト高騰に伴い「使用量を抑えている」や「購入量を抑えている」という回答が多く、肥料などを少しでも節約して使用する努力や、必要以上に購入することを回避する動きが多くありました。そのほか、「値上がり前にまとめて駆け込み購入した」などの対応があったことも分かりました。
一方、生産に不可欠な農業資材等が高値になっても、生産量を維持するため、購入せざるを得ず「特に対応していない」が最多になりました。
3 今後の農業資材等の供給見込みは「不足する」が78.8%
農業資材等の供給見込みは78.8%が「不足する」と回答。
「不足する」見込みの内訳は、「多少の不足」が60.4%、「大きな不足」が18.2%と、今後の生産に向けて農業資材等を十分に確保できるのか、農業者が不安を抱えていることがうかがえます。
4 コスト高騰を受け、22.1%は生産量を「抑制した・抑制見込み」
農業資材等の高騰による農産物の生産量への影響は、22.1%が「抑制した・抑制見込み」と回答。会員は、厳しい経営環境でも農産物の「安定的な供給」に取り組む努力をしていますが、農業資材等の高騰により一部の農業者においては、生産量を減らさざるを得ない状況になっていることが浮き彫りになりました。
業種別では、「花き」で「抑制」が35.3%と最も高くなっている一方、「果樹」は4.5%と業種に差があることがわかりました。
5 今年の経営見通しは「マイナス」が43.8%
長引く新型コロナ感染拡大の影響から脱却できていない中で、農業資材等の高騰の影響を受け、43.8%が今年の経営見通しを「マイナス」と回答しています。
業種別では、畜産で「マイナス」が62.9%と最も高くなっています。
6 今年の資金繰り見通しは「苦しい」が64.2%
今年の資金繰り見通しは「苦しい」が64.2%と半数を超えています。
業種別では、「花き」で「苦しい」が76.5%と最も高くなっています。
7 コスト高騰に伴う農産物の価格転嫁は「できていない」が96.1%
合理化が求められている複雑な流通構造の中、農業資材等のコスト高騰分を販売価格に「価格転嫁できていない」先が96.1%という実態が明らかになりました。
また、価格転嫁ができない理由として、「農業者サイドの価格交渉力が弱い」が最も多く、「食品製造・流通業等サイドのバイイングパワーが強い」という回答も多くありました。農業界特有の「無条件委託販売」という取り引きでは、農業者の意向が販売価格に反映されにくいほか、食品製造等と直接取引をしている農業者であっても、コストを上乗せできていないことが分かりました。
昨今、外食産業や食品企業が原材料等の高騰を受け、一部製品の値上げを発表し、テレビ等で報道されています。
会員は今後も国民への食料の安定供給の責めを果たしつつも、「価格転嫁できていない実態があることを消費者にも知っていただきたい」との意見が多く出されました。
8 農業資材等を国内調達することに「期待する」が81.4%
農業資材等の調達を海外に依存している傾向があるため、81.4%が国内資源を活用(資源循環)し、国内で製造、調達することに「期待」しています。
業種別では、食品の原材料にもなることが多い「麦類・穀類・芋類・工芸」で88.5%が「期待する」と最も高くなっています。
9 主な意見の要約
会員からは以下のような具体的な支援を求める声が多く出されました。
例えば、「畜産における飼料高騰は死活問題。このため、配合飼料価格安定対策のさらなる基金増額と継続的に価格が上昇した際の適正な補てんのための発動基準の見直しをしてもらいたい」という意見がありました。
また、「『施設園芸等燃油価格高騰対策』の対象に環境にやさしいLPG(液化石油ガス)やLNG(天然ガス)も支援対象にしていただきたい」といった意見のほか、「肥料や農薬などは価格高騰時に補てんされる制度がないため、『施設園芸等燃油価格高騰対策』のような制度を新設してもらいたい」との声もありました。
そのほか、「鶏ふんや豚ふんを活用した耕畜連携の推進など、各地域で資源循環による安定的な農業資材等の確保とその支援を進めて欲しい」や全業種共通の意見として、「農産物の販売価格へコスト上昇分を適切に反映できる流通構造の改革を求める。また、消費者に農業の現状を理解してほしい」という声もありました。
以上
(担当:総務政策課政策担当 岩﨑・古澤 TEL:03-6268-9500 掲載日:令和4年5月31日(火))